TclAppを使うと、Tcl/Tkのスクリプトと実行環境を単一のEXEファイルにラップすることができるのですが、このときprefixファイルといって、ベースとなる実行ファイルを指定する必要があります。これをtclkitとかbasekitとか呼び、標準ライブラリや最低限のエンコーディングファイルなどが含まれていて、自分で開発したアプリに必要な、スクリプト一式、ライブラリ、エンコーディングなどを、TclAppを使って追加することで単体のアプリとして動作するようになります。アイコンやバージョン情報なども、prefixに組み込まれているものを置き換えることもできます。
prefixとして使えるファイルは、実はActiveTclにbasekitという名前でついてきます(Tcl/binフォルダにある)。これがあれば別に自分でtclkitを入手する必要はないのですが、2点ほど問題があります。
- 実行ファイルのサイズが比較的大きい
- バイトコードコンパイルすると、スペースおよびマルチバイト文字を含むパスから起動できない
ということで、私にとっては不都合だったので、basekitをやめてtclkitを使うことにしました。tclkitのWindowsバイナリはTcl8.5.13まではhttp://www.patthoyts.tk/tclkitで配布していたのですが、8.5.14がなかなか出ないなあと思っていたら今日見たら落ちてました。また、配布しているものにはtzdataというタイムゾーンの定義ファイルがないので、時刻表示が狂う場合がありました。そういう理由があって、自分でコンパイルすることにしました。前置きが長くなりましたが、以下がその手順です。Windows7 Professional SP1 32bit上で試しました。
必要なものをそろえる
Visual Studio 6.0 (Visual Studio 2003でもいいと書いてあった。)
Microsoft Platform SDK Febuary 2003 (Last version with VC6 support)
kitgenのソースコードを取ってくる
C:\src\kitgenに展開。
Tcl/Tkのソースコードを取ってくる
C:\src\kitgen\8.5\tcl
C:\src\kitgen\8.5\tkに展開。
ビルド用のフォルダとMakefileを作る
VC6のコマンドプロンプトを開く
mkdir C:\src\kitgen\8.5\kit-msvc
cd C:\src\kitgen\8.5\kit-msvc
echo all: lite heavy > Makefile
echo !include ..\..\Makefile.vc >> Makefile
リソースファイルを編集する
これはお好みですが、kitgenに添付されているものを使うと、TclAppでバージョン情報を編集できなくなるので、変更することをお勧めします。
C:\src\kitgen\tclkit.rcをテキストエディタで開き、CommentとPaddingを削除する。
VALUE "Comments", "Comments\0More Comments\0" VALUE "Padding", " " " " " " " \0"
ビルドする
Platform SDKを参照するようにします。また、KITOPTS=-zというオプションを与えることで、tzdataが含まれるようにします。他にもオプションがありますが、kitgenのREADMEファイルを読んでください。
set INCLUDE=C:\PROGRA~1\MIC1C5~1\include;%INCLUDE%
nmake -f Makefile.vc -nologo VERSION=85 KITOPTS="-z"
C:\src\kitgen\8.5\kit-msvcの中にできる、tclkit-cli.exe、tclkit-gui.exeをTclAppのprefixに指定できます。